【課題1684】
利益とは、私たちにとってどのような存在だと思うか。自分なりの考えをまとめてください。
利益とは、追いかけるものなのか。それとも、何かのあとに静かに現れるものなのか。
その問いを心に置くだけで、見慣れたはずの数字の見え方が、少しだけ変わる気がします。
私たちは日々の仕事の中で、どうしても目に見える「結果」を急いでしまいがちです。
けれど、その数字が生まれる手前にある「見えないもの」に、どれほど意識を向けられているでしょうか。
慌ただしい日常の手を少しだけ止めて、焼き立てのクロワッサンを一口かじったときのような、ふっと心が緩む瞬間に訪れる思考。
そんな穏やかなトーンで、利益という存在について、静かに考えてみたいと思います。
- 「数式」の先にある手触り
-
数字という明快な答えの背後にある、言葉にならない違和感について。
- 「順序」がもたらすズレ
-
利益を「目的」にしたとき、私たちの対話に何が起きるのか。
- 「信頼の濃度」を育むということ
-
コントロールするのではなく、静かに観察し、育む対象としての利益。
この記事は利益の意味を問い直し、関係性や信頼という観点から捉え直すことについて、セールスパーソンおよびビジネス指導者としての立場から、私の考え方を整理し共有するものです。
利益という言葉への、ささやかな違和感
「利益=売上-コスト」
この計算式はどこまでも正しく、そして残酷なほど明快です。
経営という海を渡るための羅針盤として、これほど頼りになるものはありません。
けれど、現場で誰かと向き合い、その人生の大切な瞬間に立ち会うとき、この無機質な数式だけではどうしても説明のつかない「手触り」のようなものに出会うことがあります。
同じように言葉を尽くし、同じように誠実を尽くしたつもりでも、ある時は深く受け入れられ、ある時は春の雪のように静かに距離を置かれる。
その決定的な違いは、どんなに精緻な計算式を眺めても、答えとして浮かび上がってはきません。
数式からこぼれ落ちてしまう、その「何か」に目を向けたとき。
私は「利益」という言葉が持つ意味を、もう一度だけ、静かに捉え直してみたくなるのです。
利益は「関係性の結果」として現れるのではないか
今の私にとって、利益とは直接つくりにいくものではなく、丁寧な関係性を積み重ねた先に、ふと現れる「しるし」のようなものに感じられています。
目の前の方との対話の中で、どれだけ相手の言葉に耳を傾けられたか。
言葉の表面にあるニーズだけでなく、その奥に隠れた迷いや、時にご自身でも気づいていないような不安に、そっと触れることができたか。
あるいは、こちらの目標やスケジュールではなく、相手が今置かれている状況や、大切にされている時間に、どれだけ真摯な配慮を届けられたか。
それらの一つひとつは、目に見えないほど小さな出来事かもしれません。
けれど、それらが静かに降り積もっていくことで、二人の間に流れる空気の質が、少しずつ、けれど確実に変わっていきます。
そして、その変化がある日、ある瞬間に「契約」や「紹介」という形を借りて、私たちの前に姿を現す。
その姿を見て、私たちは後から「利益」という名前をつけて呼んでいるだけなのかもしれない──。
最近は、そんな風に考えるようになりました。
順序が逆転したとき、何が起きるのか
一方で、利益を「目的」の真ん中に据えた瞬間に、何かが微妙に、けれど決定的に変わってしまう感覚もあります。
「どうすれば契約をいただけるか」
「どうすれば数字が積み上がるか」
その問いを持つこと自体は、とても大事なことです。
プロとして結果を出す責任を負う以上、それは避けては通れない問いでもあります。
ただ、その問いが心の一番前へ出てきたとき、相手との対話はいつの間にか、目的を達成するための「手段」へと姿を変えてしまいます。
相手の話を聞いているようでいて、実は自分の提案をどこで差し込もうかとタイミングを計っている。
共感しているつもりでいて、実は自分の思い描くゴールへの同意を取りにいっている。
そのわずかな心のズレは、たとえ言葉にしなくても、空気を伝わって相手に届いてしまうものです。
猫が、こちらの緊張や気負いを敏感に察して、すっと離れていってしまうのと少し似ているかもしれません。
だからこそ、利益を先に置くのではなく、まずは目の前の関係性に対して誠実であろうとすること。
その「順序」を守り通せるかどうかが、結局のところ、長い年月を経て手元に残る結果の違いを生んでいるのではないか。
今は、そんな風に感じています。
「信頼の濃度」という捉え方
ある日の休日、山あいの静かな湯船に身を委ね、少しぬるめのお湯に浸かりながらぼんやりと考えていたときのことです。
利益とは「信頼の濃度」のようなものではないか、という感覚がふいに浮かびました。
信頼というものは、決して目には見えません。
けれど、それは確かにそこに存在していて、日々のささいな関わりを通じて、成分が少しずつお湯に溶け出していくように積み上がっていくものです。
そして、その濃度が一定の深さに達したとき、自然とご紹介の言葉をいただいたり、迷いのない意思決定が行われたりする。
その穏やかな結実として、数字という結果がついてくる。
もしそうだとするならば、利益を増やそうと躍起になることは、信頼の濃度を高めようとすることと同義なのかもしれません。
ただし、お湯の成分を無理やり変えることができないように、信頼もまた意図的に「増やす」というよりは、日々の誠実な関わりの中で「育っていく」のを待つしかない性質のもの。
その意味で、利益とはコントロールする対象というよりも、今、自分と相手の間にある信頼がどれほどの濃度であるかを、そっと観察させてもらう指標に近い存在なのかもしれない。
湯気に包まれながら、そんな風に思いました。
見えないものに、どこまで意識を向けられるか
営業という仕事に携わる以上、結果が数値で測られることから逃れることはできません。
それはプロとしての厳しさであり、同時に一つの公平な指標でもあります。
ただ、その数値の「背景」に広がる景色に、どれだけ意識を向けられるか。
そこに、その人なりの仕事に対する哲学が、静かに現れるように思うのです。
目先の短期的な数字を必死に追いかけるのか。
それとも、二人の間に流れる関係性の質を育てることに、重きを置くのか。
どちらが正しい、という正解があるわけではありません。
ただ、どちらを大切にしたいかという「選択」は、日々の何気ない言葉遣いや、ふとした瞬間の態度に滲み出てしまうものです。
そしてその積み重ねが、数年後、自分の周りにまったく違う景色を見せてくれるのではないでしょうか。
利益をどう位置づけるかという問い
ここまで考えを巡らせてきて、利益とは「自分と相手の間に積み上がった見えないものが、ある瞬間に可視化されたもの」と言えるのかもしれない、という場所に行き着きました。
そう捉え直してみると、利益は決してゴールではなく、尊いプロセスの一部です。
あるいは、自分たちの関係性が今、どれほど温かく、深く結ばれているかを映し出してくれる、鏡のような存在なのかもしれません。
まだ、この考えが完全に整理され、完成しているわけではありません。
むしろ、こうして言葉を紡ぎながら、自分自身の未熟さと向き合い、問い続けている感覚に近いです。
静かな着地としての問い
利益をどう捉えるか。
それは、どのような仕事の仕方を選び、どのような人間として歩んでいきたいか、という問いに真っ直ぐにつながっている気がします。
目に見える数字の増減に、一喜一憂する自分でいたいのか。
それとも、目に見えない「信頼の積み重なり」に、丁寧に向き合い続ける自分でありたいのか。
まだ、私の中にも揺るぎない答えがあるわけではありません。
ですが、少なくとも今は、後者のあり方に少しだけ重心を置いていたい。
そう願いながら、今日も目の前の方との対話に臨みたいと思っています。
では、あなたにとっての利益とは、本当に「外から獲りに行くもの」なのでしょうか。
それとも、誠実に関わった時間の果てに、「内側から育まれ、受け取るもの」なのでしょうか。
まとめ
- 利益は関係性の積み重ねの先に現れる結果として捉えられるのではないか
- 利益を目的にすると対話が手段化し、関係性に微細な歪みが生まれる可能性がある
- 利益を「信頼の濃度」と見なすことで、仕事の向き合い方が変わるかもしれない
併せて読みたい一冊
『「聴く」ことの力』鷲田清一
臨床哲学の視点から、相手の言葉を待つこと、ただそこに居ることの意味を問い直します。
関係性の質が結果(利益)に変わる手前にある、「耳を傾ける」という行為の奥深さを再発見できる一冊です。
もっと深めるためのメモ
- 利益を「目的にしない」と決めたとき、何を拠り所に仕事をするのか
-
利益を結果として捉えるのであれば、日々の判断基準はどこに置くのか。
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