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なぜ業界用語は伝わらないのか ― 共通語という視点から考える

【課題005】
社内用語や業界用語を、初心者やお客様にも理解してもらうためにはどのような工夫が必要か。自分なりの考えをまとめてください。

「もっと分かりやすい言葉で話さなければ」

専門的な知識を扱う仕事をしていると、私たちは常にこの課題に直面します。
難しい用語を避け、誰にでも分かる表現に言い換える。
それは一つの誠実さですが、それでもなお、相手との間に目に見えない壁を感じることはないでしょうか。

もしかすると、言葉が伝わらない本当の理由は、用語の難易度そのものではなく、その言葉の背景にある「世界」が共有されていないことにあるのかもしれません。

この記事では、専門用語を単なる知識の伝達手段としてではなく、相手と同じ地平に立つための「共通語」として育んでいくプロセスについて考えてみたいと思います。
私自身、営業の現場で言葉を尽くしながらも、どこかで独り歩きしてしまっている自分の言葉に、ふと立ち止まることがあります。

この記事の視点
「辞書的意味」の先にある「文脈」を届ける

言葉の定義を教えることと、その言葉がどんな場面で、誰を助けるために使われているかを共有することは違います。言葉が持つ「温度感」や「必然性」をいかに分かち合うかという視点。

言葉を「壁」にしないための謙虚さ

専門用語は、時に話し手の優位性を示す「武器」になってしまうことがあります。
あえてその言葉を使うとき、それが自分たちの慣れ親しんだ言葉であることを認め、相手をその世界へ優しく招き入れる「在り方」を考えます。

「伝わる」の再定義

正確な情報を渡すことがゴールなのか。
それとも、言葉を通じて互いの前提が揃い、同じ未来を描けるようになることがゴールなのか。
コミュニケーションの本質的な目的を問い直します。

この記事は、業界内で当たり前に使われている言葉がなぜ伝わりにくいのかについて、営業の現場での気づきをもとに、「共通語」という視点から伝えることの意味を考えるものです。

目次

ビジネスはわかりにくい言葉だらけ

以前、営業の勉強会でこんなことがありました。

生命保険業界では、日常的に使われている言葉があります。
私たちにとってはごく当たり前の言葉ですが、業界の外にいる人にとっては、少し聞き慣れない言葉でもあります。

たとえば、提案、設計、保険料、保険金、保障額、更新、転換。
どれも業界では自然に使われる言葉ですが、初めてその話を聞く人にとっては、少し分かりにくく感じることがあります。

あるとき、営業経験の浅い人がこんなことを言いました。
「話の意味は分かるんですが、言葉がよく分からなくなることがあります。」

その言葉を聞いたとき、私は少し考えさせられました。

私たちは普段、「相手に分かりやすく伝えよう」と考えます。
だから、説明を丁寧にしたり、例を出したりします。
場合によっては、専門用語をできるだけ使わないようにすることもあります。

しかし、その前に見落としていることがあるのかもしれない。
そんなことを感じたのです。

言葉が伝わらない本当の理由

専門用語が伝わりにくい理由は、言葉そのものが難しいからだと考えがちです。
けれども、よく考えてみると、本当の理由は少し違うのかもしれません。

それは、その言葉が使われている前提となる世界が共有されていないことです。

業界の中にいると、専門用語はいつの間にか「普通の言葉」になります。
その言葉がどんな場面で使われるのか、どんな意味を持つのか、私たちは感覚として理解しています。

しかし、初めてその世界に触れる人にとっては、その前提がありません。
言葉だけを聞いても、どこか実感が伴わないのです。

つまり、言葉の意味以前に、その言葉が生まれている世界が見えていないということなのかもしれません。

専門用語を避けるべきなのか

では、専門用語はできるだけ使わない方がよいのでしょうか。

以前の私は、そう考えることもありました。
できるだけ分かりやすい言葉に言い換える方がよいのではないか、と。

しかし最近は、少し違う見方もできるのではないかと思っています。

大切なのは、専門用語を避けることではなく、
その言葉がこの場の共通語であることを共有することではないか、ということです。

たとえば、「これは専門用語ですが…」と説明するよりも、
「この業界では、こういう場面でこういう言葉を使うことが多いんです」
と伝えてみる。

そうすると、その言葉は「覚えなければならない難しい言葉」ではなく、
この場で使われている共通語として受け取られやすくなります。

言葉の定義よりも、使われる場面

言葉の定義を説明することはできます。
しかし、定義だけではなかなか実感は生まれません。

それよりも、その言葉がどんな場面で使われているのかを共有する方が、理解は深まりやすいように感じます。

「どんな意味の言葉か」よりも、「どんな場面で使われる言葉なのか」。

その背景が見えてくると、言葉は少しずつ身近なものになっていきます。

言葉を共有するということ

言葉というのは、ときどき壁にもなります。
しかし同時に、人と人をつなぐものでもあります。

営業という仕事は、言葉を使う仕事でもあります。
だからこそ、言葉の選び方にはいつも気を配っていたいと思っています。

ただ、言葉をやさしく言い換えることだけが大切なのではなく、その言葉が生まれている世界を少しずつ共有していくこと。
そうすることで、言葉は単なる情報ではなく、人と人の間に生まれる共通の理解になっていくのではないでしょうか。

だからこそ私は、専門用語を使うとき、ときどき立ち止まって考えるようにしています。

この言葉は、本当に相手に届いているだろうか。
それとも、ただ自分の慣れた言葉を話しているだけだろうか。

そして、こんな問いも自分に向けてみたいと思っています。

自分が使っている言葉は、本当に相手とつながっているのだろうか。

あなたが今日、当たり前のように使ったその言葉は、相手と同じ景色を見せてくれたでしょうか。
それとも、あなたと相手を隔てる壁になってはいなかったでしょうか。

まとめ

この記事の要点
  • 業界用語が伝わりにくいのは、言葉の意味より「前提となる世界」が共有されていないため
  • 専門用語は避けるより、「この場の共通語である」と前提を伝える工夫が有効
  • 言葉の定義よりも、使われる場面を共有することで理解は深まりやすい

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もっと深めるためのメモ

「なぜ伝わらないのか」をさらに深掘りしてみる(理解とは何か?)

  • なぜ人は、言葉の意味を説明すれば伝わると思ってしまうのか?
  • 同じ言葉を使っているのに、なぜ人によって理解がズレるのか?
  • 「分かったつもり」が生まれるのはなぜか?

「世界の共有」という視点を深めてみる

  • 人はどのようにして「相手の世界」を理解できるようになるのか?
  • 営業において「相手の前提を理解する」とは、具体的に何をすることなのか?
  • 人はなぜ、自分の見ている世界が「普通」だと思ってしまうのか?

「伝える」という行為を再定義してみる

  • 伝えるとは、情報を渡すことなのか、それとも前提を揃えることなのか?
  • 「説明がうまい人」と「伝わる人」は何が違うのか?
  • 人に何かを伝えるとき、本当に必要なのは言葉なのか?

営業現場に寄せてみる

  • なぜ営業では「専門用語を使うな」と言われるのか?それは本質なのか?
  • お客様との会話で「話がかみ合わない」と感じるとき、何が起きているのか?
  • 初回面談で「前提を揃える」とはどういうことか?

別の角度から深めてみる

  • 「理解した」とは、どういう状態のことを言うのか?
  • 言葉が通じるとは、本当に同じ意味を共有していることなのか?
  • 人と人が「分かり合う」とは、何が起きている状態なのか?
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この記事を書いた人

このサイトは、ビジネスの課題について思考を深めるノートです。
生命保険営業の現場経験と、業界を越えたビジネス指導の視点から、
正解のないビジネスの課題について考えています。

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