【課題020】
「考える力」とはどのようなことをいうと思うか。自分なりの考えをまとめてください。
「考える力が大事だ」と、よく言われます。
では、その「考える」とは、いったい何を指しているのでしょうか。
知識を増やすことなのか。
頭の回転を速くすることなのか。
お客様と向き合う仕事をしていると、
それらとは少し違う形の「考える力」があるのではないかと感じることがあります。
それは、正解を出すための技術というよりも、
もっと静かで、心の在り方に近い何かなのかもしれません。
- 「説明の上手さ」の先にあるもの
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分かりやすさや正しさを超えて、お客様が本当に受け取ろうとしているものは何かを探ります。
- 「自分」から「相手」へ、思考の向きを変える
-
技術としての思考ではなく、目の前の人のために心を砕き続ける「在り方」としての思考を考えます。
- 言葉の奥に滲み出るもの
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テクニックでは隠しきれない、私たちの「思考の向いている先」が、どのようにお客様に伝わっていくのかを見つめます。
この記事は、「考える力とは何か」という問いについて、顧客の視点を起点にしながら、セールスパーソンおよびビジネス指導者としての立場から私自身の考えを整理し共有するものです。
「説明が上手な人」はたくさんいる
あるお客様と初めてお会いしたときのことです。
面談の最初に、その方はこんなことを話してくださいました。
「実は、これまで色々な方から保険の話を聞いてきたんです」
そして少し間を置いて、こう続けられました。
「どの方も説明はとても上手なんです。だから余計に、誰の話を信じていいのか分からなくなってしまって」
私たちはつい、「分かりやすく説明すること」や「正しい情報を伝えること」が最も大切だと思いがちです。
もちろん、それは欠かせないことです。
説明が曖昧であれば、相手は安心して判断を下すことができません。
しかしそのとき、お客様の言葉を静かに受け止めながら、私は少し考えました。
もしかするとお客様は、説明の巧みさだけを求めているわけではないのかもしれない。
もっと別の何かを、言葉の裏側で探していらっしゃるのではないか。
そんなことを感じたのです。
お客様が見ているもの
お客様と向き合う仕事をしていると、どうしても「伝える側」の視点になりがちです。
どう説明するか。
どう提案するか。
どう理解してもらうか。
もちろん、それらは欠かせない要素です。
しかし、お客様の立場から見ると、少し違う景色があるのではないかと思うことがあります。
それは、
「この人は自分のことを、本当に考えているのだろうか」
という視点です。
どんなに説明が上手でも、
どんなに知識が豊富でも。
その人が「商品を売ろうとしている人」に見えるのか、
それとも「自分のことを考えてくれている人」に見えるのか。
お客様は、そうした部分を静かに感じ取っているのかもしれません。
そして実際のところ、その違いは、
言葉のテクニックよりも、
その人が「何を考えているか」に滲み出ているように思うのです。
考える力とは何だろう
ビジネスや向き合う仕事の世界では、よくこう言われます。
「考える力を鍛えなさい」
では、その「考える力」とは、いったい何なのでしょうか。
知識をたくさん持っていることなのでしょうか。
頭の回転が速いことなのでしょうか。
もちろん、それらが役に立つ場面もたくさんあるでしょう。
ただ、あのお客様の言葉を思い出すと、
考える力とは、もう少し違う何かのようにも感じます。
そのとき私が感じたのは、
考える力とは、「自分のこと」ではなく、「相手のこと」を考え続ける力なのかもしれない、ということでした。
この人は、何を不安に思っているのだろう。
この人は、どんな未来を大切にしているのだろう。
この人にとって、どんな選択が安心につながるのだろう。
そうしたことを想像しながら、
言葉を選び、提案を紡いでいく。
それは、難しい理論を解くことというより、
「目の前の人に対して、どれだけ純粋に関心を持てるか」
ということに近いのかもしれません。
レイチェル・カーソンは、その著書でこう遺しています。
『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない
『センス・オブ・ワンダー』より引用
正しい知識を並べることよりも、目の前のお客様が抱える「言葉にならない不安」や「静かな願い」を感じ取ること。
それこそが、本来の「考える」という営みなのかもしれません。
思考は相手のために使われるものかもしれない
そうしたことを想像しながら、
決めつけではない言葉を、
押し付けではない提案を、丁寧に紡いでいく。
それは、答えを提示することというより、
「目の前の人と、共に考える」という姿勢に近いのかもしれません。
ビジネスの世界では、
思考力や分析力といった言葉がよく使われます。
それは確かに、重要な力です。
しかしこの仕事を続けていると、
思考とは、自分の正しさを示すために使うものではないのではないか、と感じることがあります。
むしろ、
目の前の人を理解しようとするために、
その方の心に耳を澄ませるために使うものなのではないでしょうか。
相手の言葉を聞き、
相手の立場を想像し、
相手にとって何が大切なのかを、共に考える。
そうして初めて、
その人にとって本当に意味のある「何か」が生まれるのかもしれません。
考える力とは、
難しい論理を組み立てる能力というより、
「目の前の人のことを、どれだけ真剣に考え続けられるか」
という、心の持続力のようなものではないでしょうか。
お客様は見ているもの
お客様と向き合う仕事は、どこか不思議な仕事です。
同じ商品を扱っていても、
同じ説明をしていても、
結果が、あるいはその後の関係が変わることがあります。
その違いは、話し方やテクニックだけでは説明できないことも多いように思います。
もしかすると、お客様は
こちらの言葉だけではなく、
その言葉の奥にある「思考の向いている先」を感じ取っているのかもしれません。
この人は、自分の都合を考えているのか。
それとも、私のことを考えてくれているのか。
その違いは、言葉にせずとも、
空気感として、静かに伝わってしまうものなのかもしれません。
もしそうだとしたら、
私たちにとっての「考える力」とは、
自分のためのテクニックを磨く思考ではなく、
「相手のために思考を使い続ける姿勢」そのものなのではないでしょうか。
では私は、
目の前のお客様のことを、
どれだけ深く、本当の意味で考えられているのでしょうか。
それとも、
自分の説明がうまくいくことばかり、
考えてしまっているのでしょうか。
まとめ
- お客様は営業の「説明の上手さ」だけを見ているわけではない
- 考える力とは知識の多さではなく、相手を理解しようとする思考かもしれない
- 営業の思考は、最終的に「誰のために使われているか」が問われる
併せて読みたい一冊
『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』ケイト・マーフィ
この本は、「人の話を本当に聞くとはどういうことか」を丁寧に考えさせてくれる一冊です。
相手の言葉の奥にあるものを想像することが、思考や人間関係をどれほど豊かにするのかが語られています。
営業に限らず、「相手を理解しようとする思考」の大切さを静かに教えてくれる本だと思います。
もっと深めるためのメモ
考える力の「質」を深めてみる
- 考えるとは「理解すること」なのか、それとも「判断すること」なのか。
- 相手のことを考えているつもりで、実は自分のことしか考えていない状態とはどのような状態か。
- 「深く考える」とは、時間をかけることなのか、それとも別の何かか。
顧客視点をさらに深めてみる
- 顧客は「考えている営業」と「考えていない営業」をどこで見分けているのか。
- 顧客にとって「この人は自分のことを考えている」と感じる瞬間とはどんなときか。
思考と営業成果の関係を問う
- 考える力が高い人は、必ず営業で成果が出るのか。
- なぜ「よく考えている人」が必ずしも選ばれるとは限らないのか。
思考の“限界”に踏み込んでみる
- 人はどこまで他人のことを理解できるのか。
- 考えすぎることは、相手のためになっているのか。